【126】 いつまで続く、高野連の時代遅れ        2007.05.02


 日本高校野球連盟(脇村春夫会長)は、日本学生野球憲章で禁じられている野球部員の特待生制度について、本日午後6時までに学校からの報告を締め切った結果、44道府県の私立334校(7457人)が特例措置を設けていたと発表した。
 発表後に東京都20校と茨城県10校など私立39校が追加申告し、ここまでで高知県を除く46都道府県で特例措置が講じられていたことが判明した。高野連は、最終結果を3日に発表するとしている。
 ことの発端は、プロ野球・西武ライオンズから金銭供与を受けていたアマチュア選手の出身校「専大北上(岩手)」が、憲章違反の制度を設けていたことがわかったのがきっかけで、高野連は4月から全国調査を開始していた。
 特待生制度は、卓球の愛ちゃんなどのように他のスポーツでは認められているが、高野連は学業優秀や経済的な理由以外は、「野球留学やブローカー暗躍の温床となる」などとして認めていない。
 今回の場合、違反があった学校に対しては「〈1〉野球部長の交代〈2〉5月末まで、当該選手の対外試合出場を禁止〈3〉当該選手や保護者に説明し、制度の解約同意書を作成する」などの措置を講じるようにと求めている。申告した学校は、夏の甲子園出場をかけた地方大会には参加できるが、この後に違反が判明した場合、対外試合禁止処分もあり得るとしている。


 結論を先に言えば、角を矯めて牛を殺すような稚拙さである。学業優秀な生徒が奨学金制度を利用し、寄留・寄宿して一流校を目指すように、野球の才能に秀でているものが特待制度を受けてその才能を伸ばそうとすることに、何の痛痒があるというのか。
 保護者や監督などの関係者をも巻き込んで、選手の将来の契約に大金が動くというのは誉められたことでないのも事実だが、それはそんな騒動を起こす側を取り締まるべき問題であろう。過日の西部ライオンズの契約違反のゆえに、高校野球の選手の特待制度もいけないというのは、事大主義(全体に対する見通しもなく瑣末なことを誇大に騒ぎ立てる態度)に過ぎるというものだ。


 他のスポーツは認めていることを、「日本学生野球憲章」を金科玉条として『高校野球には認めない』というのも、高野連の思い上がりだろう。高校野球の人気とレベルを支える、清原・桑田…斉藤・田中…といったスーパースターが現れるのも、特待制度があってこそであることは、野球関係者ならずとも気づいている。特待制度なくして、高校野球の魅力も求心力も維持できない。
 高野連が今日までその事実を知らなかったといっても通用する話ではなく、何をいまさら…と誰もが思っている。責任を取るのならば、高野連も同罪である。
 さらにいえば高野連はこれまで、部長や先輩が練習中に生徒や後輩の頭をこついたとか、野球部員の一人が校外でケンカしたとか万引きをしたとかで、その野球部を活動禁止にするといった措置を繰り返してきたが、これも高野連のお山の大将的性癖(仲間内や狭い範囲の人たちの間で一番偉そうに得意顔に振る舞うこと)である。教育的判断を振りかざしているのならば、高野連として独自の調査をして『こつかれたほうが悪い』となぜ言えないのか…。一人の不始末に野球部全体の罪を問おうというのは、江戸時代の五人組制度と同じ発想ではないか。
 関係者の周知の事柄を今まで放置しておいて、こと社会ネタになったら、現在、特待生として在籍している生徒たちの処遇も示しえないままに処分だけをちらつかす今回の処置に、高野連の事なかれ主義と保身を見るのは、私だけだろうか。


 高野連は、近年の事例を基にして、処置の見直しを検討するべきである。かたくなに「日本学生野球憲章」を楯にしてきた身には、見直しに腰を上げることも出来ないかもしれない。自分で判断できないのならば、「見直すべきか、見直さなくてもよいか」を、まず世の中に問うとよい。「見直すべきだ」という意見が圧倒的多数ならば、外部の人たちも入れての検討委員会を立ち上げ、高野連改革を断行するべきだろう。


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